2024.03.07
【運転免許証の自主返納】運転を卒業するということ
2024.03.07
【運転免許証の自主返納】運転を卒業するということ
運転時の操作ミスによる事故が多く報じられる中、運転免許証の自主返納を考える高齢ドライバーも増えてきています。今回は、運転免許証更新時の「認知機能検査」や、自主返納した方への支援策などについてご紹介します。この機会に、改めて運転について考えてみませんか?
自動車の運転を卒業する目安は?
高齢運転者標識は「70歳以上」に努力義務が
「警察庁│高齢運転者標識を活用しましょう!」より引用
運転免許証の所持には、年齢の下限はあるものの、上限は設けられていません。ただし、普通自動車を運転できる免許を持つ70歳以上のドライバーには、普通自動車(軽自動車を含む)の前面と後面の両方に高齢運転者標識を表示する努力義務(罰則なし)があります。ちなみに、運転免許証の更新期間満了日における年齢が70歳以上のドライバーには、運転免許証を更新する際に高齢者講習の受講が義務付けられています。このように「高齢運転者」とされることを、運転卒業について考え始めるきっかけとしてもよいかもしれません。
「認知機能検査」は更新期間満了時75歳以上で義務化
運転免許証の更新期間満了日における年齢が75歳以上になるドライバーは、満了する日までの6カ月以内に認知機能検査などを受けなければなりません。加えて、75歳以上のドライバーが信号無視など「認知機能が低下した場合に行われやすい一定の違反行為」をした場合も、臨時に認知機能検査や、その結果に応じた高齢者講習などが行われます。
認知機能検査とは、記憶力や判断力を測定する検査です。認知機能検査には、イラストを使って記憶力を検査する「手がかり再生」と、年月日などを尋ねて時間の感覚を検査する「時間の見当識」という2つの検査項目があります。「警察庁│認知機能検査について」で、検査で利用する検査用紙、イラストおよび検査の採点方法をPDFファイルで公開していますので、周囲の方を検査員役として検査を体験することもできます。もちろん、検査が義務付けられる75歳を一つの目安として、運転卒業を考えてもよいでしょう。
運転卒業のための「運転免許証の自主返納」
「運転免許証の自主返納」とは?
「警察庁│運転免許証の自主返納について│運転免許の申請取消(自主返納)件数と運転経歴証明書交付件数の推移」より引用
年齢に関わらず、運転免許証が不要になったドライバーは自主的に運転免許証を返納できます。運転免許証を持ちながら運転をしない、いわゆる「ペーパードライバー」も特に違反などにはあたりませんが、運転卒業の形として運転免許証の自主返納をする人は少なくありません。また近年では、高齢ドライバーの運転免許証の自主返納を推進するさまざまな支援策なども登場しています。
・運転免許証に代わる身分証明書「運転経歴証明書」
「警察庁│運転免許証の自主返納について」より引用
「運転免許証を返納すると、手元に顔写真付きの身分証明書がなくなってしまう」と考える方も多いのではないでしょうか。「運転経歴証明書」は、運転免許証を自主返納した人や運転免許証の更新を受けずに失効した人が交付を受けられる証明書です。平成24年4月1日以降に交付された運転経歴証明書は、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として利用できます。ただし、自主返納後5年以上、または運転免許証の失効後5年以上が経過している人や、交通違反などにより運転免許証の取り消しとなった人は交付を受けられません。
・自主返納した人を対象とする特典なども
車がなければ買い物や通院に困る方も多いでしょう。実は、運転免許証を自主返納した方を対象に、自治体や事業者などによるさまざまな支援が行われています。例えば東京都の「警視庁│高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業・団体の特典一覧」で紹介されている特典を見ると、デパート・スーパーによる「当日宅配サービス無料」や、タクシー会社による「乗車料金の割引」など、車のない生活をサポートする内容が多数見られます。また、中古車販売店による自動車買い取り成約時のプレゼントや買い取り価格の増額、エンターテインメント施設や飲食店の割引・サービスなど、運転卒業後の暮らしを助けるさまざまな特典が提供されています。
運転を卒業するのにもさまざまな形がある
トラクターや原動機付自転車には乗り続けられる「運転免許の一部取り消し」
「運転を卒業する=運転免許証の自主返納」と考えがちですが、それぞれの事情に合わせた形も考えてみましょう。例えば「生活の足としての普通自動車の運転は卒業するけれど、農作業用のトラクター(小型特殊自動車)は引き続き運転したい」、「自宅近隣でちょっとした荷物を運ぶために、原動機付自転車は引き続き運転したい」といったケースであれば、「運転免許の一部取り消し」を申請する方法があります。これによって「普通自動車の運転免許は取り消すが、原付免許・小型特殊免許は引き続き保有する」ことができます。
一部取り消しの場合運転経歴証明書は交付されない
運転免許の一部取り消しの場合は、申請後も引き続きその他の運転免許証を保有することになります。そのため、普通自動車の運転を卒業するといっても、運転経歴証明書の交付は受けられません。例えば「夫は運転免許の一部取り消しでトラクターでの農作業を続け、妻は運転免許証の自主返納で買い物や通院に便利な特典を利用する」など、工夫して乗り切りたいところです。
長らく車ありきの生活を送ってきた方などは、運転免許証の自主返納で大きく生活が変わることに不安を抱きがちなものです。いつまで運転するか、卒業したらどう暮らしていくか。ぜひご家族で一緒に考えてみてください。
参考:
警察庁│高齢運転者標識を活用しましょう!
警察庁│令和2年版 警察白書
警察庁│認知機能検査について
警察庁│運転免許証の自主返納について
警察庁│運転免許の一部取消しについて
警視庁│自動車の運転者が表示する標識(マーク)について
警視庁│高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業・団体の特典一覧
政府広報オンライン│運転が不安になってきたシニアドライバーやそのご家族へ 運転免許証の「自主返納」について考えてみませんか?
千葉県警察│高齢者講習等について